ニートアイランド現象
ほとばしるいじめてオーラをエコロジー路線で活字にするための徒然。短めのを載せてみたりします。長いのは暖め中。

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つなぐ
つなぐ

セミの羽音の一枚一枚が深緑の狭間に響き渡っているとはいっても、
彼らが成虫となり鳴動を始めるまでに経る悠久幾年土中の生活は、胎児が幼女を過ぎて少女へ変遷するまでの、思い出の命、が、形作られる過程ほどには長い歳月だ。その後セミは永遠にも似た暗闇から顔を覗かせ、光、音、鼓動の触れ合いを一身に浴びる。・・・。
 妹のリコがふっくりした掌でそのぬけがらを掴んだのを思い出した。 もう動かない殻を死んでしまっていると勘違いして、土の中に埋めた。私が抜け殻だって説明すると「でも動かないもん」。涙ぐんで、ぺたぺた土でお墓を組み立てていたから、墓標の代わりの長いものを差し出してあげると。リコはありがとと墓標を受けとってその土に示した。
「ねえ。私も・・最後はここに還るの?」
「そうだよ」
「お姉ちゃんも?」
「うん・・」
「二人でじゃ、だめなのかな」
「?」
「さみしいし」
 リコは俯いて、セミの埋められた土を見ていた。私は、そんな遠い先のことはまだ考えなくていいよ。と、少女の髪を撫でた。柔らかく育ちきっていない小柄なつむじをくしゃくしゃ撫でると、リコはくすぐったく顔を綻ばせた。


 柔くて小さな掌を離さないと誓ったから、温もりの消えた今も握り続けてる。
「・・お姉ちゃん」
 心なしか私を呼ぶ声が耳の奥から聞こえた。
「なあに?」
「もう、離してもいいんだよ」
「駄目よ。こうして握ってなきゃ、リコはすぐに遠くへいっちゃうんだ」
 私の胸元くらいまでしかない背丈の少女だった。あどけなくて甘えん坊だから心配で繋ぎとめておきたくなる。咎めて、側においておかなきゃ消えてしまいそうで離れるのが怖い。だからもっと強くつなぐ。
「お姉ちゃん。痛いよ。離してよ」
「あ・・ごめん」
 そして緩めても、私は吸い付いたように少女を掴んだままだった。
なだらかに伸びた白い五指と、手首の部分の紅い断面を露にして、零れ墜ちた朱の先に続く躰そのものを失った、その少女を包んでいた。
 ・・掌だけとなってしまったリコを頑なに繋いでいた。
 護りきれず、悠久に消えてしまった少女は「掌」となって現世に留まり続けていた。
まだ、もう少しだけ、いっしょにいられることを知ってしまったから余計に離せない。
 ・・私はまたリコに甘えてる。
「お姉ちゃん。もう無理だよ」
「どうして?」
「また、別れなきゃいけない。:ごめんね」
「リコ・・」
 名前を呼んだ。掌としてわたしにすっぽりと納まった少女。
「バイバイ」
 そうして握りしめたはずの掌が崩れた。腐食して、風化して、生きれる時を無くし、原型を忘れたリコの掌が地に墜ちる。熟したトマトのように水っぽい音を立てて、鼓動を鎮めたために腐敗の香りを撒いていた。死んだ。途絶えた。
「・・リコ・・」
 何度も少女の名前を呼んだ。
 返事はない。
 ああ、この少女は本当に遠くへ行ってしまったんだなぁ。霞の彼方に消えて戻ってはこないのだなぁと、私は呆然、立ち尽くした。
 私の声が霧散する。
 リコの声は還ってこない。
 空になった手の中が寂しかったから、私は、崩れて地面にはいつくばった少女を見つめて。私は。
 手首にナイフをあてがり。
 私自身を切り取った。逆手のリストから切り取られ鮮やかに朱を照らす私自身を、もう熟れてひしゃげたリコの掌に合わせた。
 土を開けて、墓標をポケットから取り出す。
 二つの掌を繋いで地に還した。なだらかに伸びた五指が絡みあって一つになる。
 視界が土に埋もれて黒く染まった。リコの体温を感じる。
・・。・・残りの肉体が、いまどこでどのように暮らしているのかはわからない。けれど、もうこれで私は永遠にリコを手離すことは無くなった。
「お姉ちゃん・・」
「なあに?」
「・・もう、どこにもいかないよね?」
「当たり前じゃない。約束したでしょ」
 何があっても、もう離さないと誓ったから、この小さくて柔らかい掌を 守るためにずっとずっと側にいるのだ。
 私はくすぐったく甘えてくる少女の掌をもう一度、強く握り返した。
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