ニートアイランド現象
ほとばしるいじめてオーラをエコロジー路線で活字にするための徒然。短めのを載せてみたりします。長いのは暖め中。

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屋上ヘルアンドヘル(3)
「君が落ちるところみたら怖くて怖気ついてしまう。きっと、飛べなくなるよ・・・」
「じゃあ、今日のところは帰って明日死ねばいいじゃない」
「いきおいがなくなるからいやだよ・・・」
 あれから二人はかれこれ20分ほど、どちらが後に死ぬかの論争をしていた。今のところはOLさんが一方的にペロを攻撃している。
「レディーファーストさえわきまえてないから、そんな駄目になってクビになって死にたくなるのよ、この根性なし」
「欝だ死のう」
「あ、まって、私が先っていってるでしょ、ドサクサにまぎれて何弱いもの装ってるのよ」
「ち・・・」
 ペロの舌打ちは聞こえなかったがOLさんは誘導尋問されていたことに気づいたらしく、両手を広げた彼を「ごめんね」となだめにかかった。どちらが後に死ぬかの押し付け合いを、二人は幾度となく繰り広げていた。
ペロは考える。どうすれば二人が納得できるか。
彼はこのままでは二人ともが死にきれないという危惧を抱いていた。
方法はすでに思いついている。しかしそれを彼女の方が呑んでくれるかどうかが問題だった。受け入れてくれなかったら、どちらも目的を遂行できないまま、再び死んだほうがましなほどに暗い、おぞましい現世をさまようのだろう。
 しかし、今実行できないなら同じことだとペロは結論を下した。いままで自分の意見を肯定されることなんてなかったから、言い出せずにいたが、ペロは思い切って提案する。
「あの」
「なによ」
「簡単な話なんだけど」
「うん」
「ふたりで同時に飛び降りればいいんじゃね?」
「いいわね、それ」
返事は意外にあっさりとしたものだった。
「いいの?」
 ペロは久しぶりに自分を肯定された気がして、いままでの人生が否定の連続だったことにあらためて実感し、より飛びたくなった。
「なんか私、もう吹っ切れちゃったってゆうか」
 OLさんも青ざめたようなすがすがしい表情をしている。
「私さ、友達とかそういうのいないし、女の人ともろくに打ち解けたことないから、最後にこういう風に男の人と話せて、もう心残りないの」
「ふうん。そう」
「うん」
 そういって給水タンクでモチベーションを高めた二人は後悔などないとばかりに両手を広げた。ぴったりと息のあった動作で踊るように助走体制に入ってゆく。
あるいは、孤独な人生に疲れて死のうとしていた二人に、奇妙な絆のようなものが芽生えていたのかもしれない。
ペロとOLさんの表情はもはや天寿を全うせんとす人のそれだった。
「いっせ―ので?」
「うん。いっせーので」
 二人は初速を踏んだ。
 そこで。
―――壮絶な、金属と金属がぶつかりひしゃげる音が、都会のビルの屋上までを貫ぬいて、響きわたった。
(たいへんだ。事故だっ。交通事故)
(はぁ?対抗する二台のトラックに人間が挟まれたってぇ?)
下の喧騒が小さく二人の耳に入った。
(やべぇ・・・。ぐしゃぐしゃでみれたもんじゃねえ・・・)
(救急車と警察を、早く!)
 ペロはあまりの急な事故に飛ぶことを忘れて給水タンクに立ち尽くしていた。遠くの地面で起こった事故に足がすくむ。血溜まりが広がり、肉塊もまばらに散らかっているのが小さく見えた。眩暈でまぶたの辺りがちかちかしてきて座り込んでしまう。
OLさんは膝をがっくりと落とし
「あ、やだぁこれ」
うなだれて
「しにたくない、やっぱやだ」
 血だまりをみたショックか泣き出してしまった。
「やだやだ、やっぱおぅえ――――――ぇ、―――ぇえ―――」
 ついでに口元を押さえて適わず―――嘔吐までして、出したものが都会の地面に流れ落ちる。
(なんだ?なんかふってきたぞ)
(ゲロじゃねえ?)
(え?まじ?)
 そうしてどこからか聞こえる救急車の音を聞きながらOLさんはまぶたを閉じた。


 何度かの眩暈のあと、いつ降りたのかペロは屋上で寝転んでいた。何分たったかわからない。それほど時間はたってはいないようだ。OLさんの方を見ると、うつぶせに胃液をたらしてぐったりしていた。
「ねえ」
「なによ」
少し間をおいてから目を開けて億劫そうにOLさんは返事をした。
 よかった生きてる、とペロは安堵する。
「下おりて病院いかねえ?」
「もうどうだっていーよ。おぷぅ」
「あーあ」
「先に下りてる」
「うん」
 OLさんはよっこらと立ち上がって屋上の入り口ドアに姿を消していった。
さすがにごはんどうですかは言えないよなとひとりごちて、ペロ(28♂)は帰りの階段をおり始めた。
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